古い住宅の問題点
日本では高度経済成長期の1970年代に多くの一戸建て住宅が誕生しました。
それ以前の団地ブームが一段落し、より広い住宅をファミリー層が求めるようになり、郊外のニュータウン開発が盛んになり、建売住宅やプレハブ住宅などもこの頃現れます。
その頃に一戸建ての家を建てた世代が現在60〜70代となり、その中の多くが現在住宅において深刻な問題を抱えています。
その当時建てられた住宅には、狭小住宅、設備不良住宅、環境不良住宅などが多く、もともと高齢者や身体障害者の身体状況に適合するよう設計されていないので、現在から見ると欠陥だらけなのです。
特に問題となる代表的なポイントは以下の通りです。
@段差が多い
日本の住宅は木造建築(木構造)が一般的ですが、それだと床面に段差ができやすいという特徴があります。
木造の場合、建築基準法においては1階の居室の床の高さは、直下の地盤面から450mm以上なければならないとされています。
日本は湿度が高いので、床下の通風を確保して、土台や床などの腐食や害虫被害をできるだけ防ぐためというのがその理由です。
この規定のため、玄関の敷居や上がりがまちにどうしても大きな段差を付けざるを得なくなります(ただし、防湿土間コンクリート《床下を全てコンクリートで覆う工法》の場合は例外で、床の高さについては特に規定はありません)。
また室内においても、風呂場と脱衣所の間、和室とリビングや廊下などとの間、襖の敷居などに段差が多く存在します。
これらの段差は若くて健康体であればほとんど気になりませんが、高齢者や障害者の生活には大きな悪影響を与えます。
また、段差ではありませんが、日本式の浴槽は縁が高く、入るとき足を高く上げてまたがなければならないので、多くの高齢者や障害者の自立入浴を困難にする大きな原因となっています。
A廊下や開口部の幅員が狭い
日本の住宅は一般的に廊下や階段や扉(ドア)の幅が狭いのも特徴です。
日本では昔から尺貫法を用いて建築材料や部材の寸法を決めていましたが、現代でもこの規格が広く使われています。
尺貫法を使うと、廊下や階段や開口部の幅員は、柱芯−芯の間隔を3尺(910mm)にすることが一般的ですが、これだと実際の内寸寸法は最大でも780mmに過ぎません。
このサイズでは、自立歩行が困難になって介助者が歩行の介添えをしたり、自走用車椅子などの福祉用具を使用する高齢者や障害者が移動するには狭すぎます。
B居室が狭い
日本の住宅は最近では広くなりつつありますが、70年代までに建てられた一般的な住宅は、先進諸外国の住宅に比較して狭く、一室あたりの面積も手狭です。
しかも、収納スペースは和室の押入れや天袋くらいしかないので、現代のように電化製品や家具類などが多様化して増えると、それらが床面積の多くを占めるようになり、ますます居住スペースが狭くなります。
このように空間が狭くなると、室内間の移動、特に車椅子などの福祉用具を使った室内移動や、介助や介護するためのスペースを確保することが難しくなります。
例えば、畳の上で布団を敷いて生活していた高齢者が、身体機能の低下によりベッドを使い始めたら、布団を使っていた頃よりも部屋はかなり狭くなり、夫婦二人で就寝することも困難になるでしょう。
また、浴室やトイレの洋式化は進んでいますが、面積が狭いので車椅子で出入りしたり、トイレに介護者が一緒に入ることができません。
C冬に寒い
日本の住宅は、高温多湿という気候に従い、どちらかと言えば夏に合わせて作られているので、冬の間は室内の寒さが厳しいという問題があります。
暖房は居間などの居室では抜かりありませんが、脱衣所や浴室やトイレに暖房施設を設けている住宅はほとんどなく、居室との温度差が激しいため、高血圧など循環器系の疾患を持つ高齢者が、暖かい居室から脱衣所やトイレに移動して衣服を脱いだり、そこから熱い湯につかったりすれば、血圧が大きく変動し脳溢血などの原因となります。
現に日本では、高齢者の入浴中の死亡事故やトイレで倒れる事故がとても多く、それはこのような住環境が大きく関与していることは間違いありません。
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